「マンション管理士ってなにする人なの?」 マンション管理士が生まれた理由 | アセタス

「マンション管理士ってなにする人なの?」 マンション管理士が生まれた理由

川原一守
川原一守

マンション管理士は、高経年マンションの増加への対策の必要性と、専門的な知識が不十分な区分所有者の集団である管理組合の適切な運営の確保を支援する目的で、国家資格として創設されました。マンション管理士は専門知識や事例を元にした経験に基づいたアドバイスや運営実務の支援をすることで円滑な管理組合運営をサポートしています。このコラムではマンション管理士が創設された背景についてご紹介します。

マンション管理士という資格が創立されて10年以上が経過しましたが、独立して管理組合のコンサルティングを行うマンション管理士は非常に少ない状況です。

また、マンション管理やマンション生活の悩みや問題は数え切れないほどありますが、マンション管理士を活用もまだまだ進んでいません。

これは「マンション管理士が活用できる」という周知が足りないとともに「独立して実績と経験の豊富なマンション管理士が不足している」という2つの理由があります。

今回は資格創設の背景を振り返ることで、マンション管理士の役割や必要性をご紹介したいと思います。

資格創設から10年の現在も独立マンション管理士の不足

私はマンション管理士の資格創設後、一期生として合格し、翌春2002年4月にマンション管理士事務所を開業しました。試験を受けること、そして独立することは人生の大きな決断です。当然、マンション管理士という職業や、資格の将来性等を検討しました。

結論は驚くほど簡単でした。

2001年、当時においてもマンションの状況について調べれば調べるほど、マンション管理士の必要性について確信を持つことができました

そして実際に独立して管理組合をサポートして現在10年以上経ちましたが、必要性を感じることを通り越して、ニーズに対して管理組合コンサルとして充分な知識、経験のあるマンション管理士の不足に危惧すら抱いています。

管理組合の運営のコンサルティングは、それぞれのマンションの固有の事情や状況を的確に把握して行う必要があり、丁寧に時間をかけてオーダーメイドの適切な支援が必要とされています。マニュアルやルーチンワークとしてこなせる仕事ではなく、一人のマンション管理士が対応できる管理組合数にはおのずと限界があるのです。
画像説明:管理組合コンサルティングは個々のマンションに応じたオーダーメイドであるため、コンサルティングに経験が必要

マンション管理士の資格ができた背景

「老朽化+管理不全によるスラム化」への対処

マンション管理士はマンション管理士の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)(平成12年12月8日法律第149号)の制定により国家資格として誕生しました。

この法律を国が何故作ったか、つまりなぜマンション管理士が生まれたか、というのは国土交通省の指針を読み取ることで理解できると思います。
マンションの管理の適正化に関する指針

この指針の内容を簡単に説明すると

  • マンション管理は共有の財産として、権利関連の複雑さや、建築物として技術的な専門知識の判断の必要性など多くの課題がある。
  • 今後老朽化マンションが急拡大する。
  • 管理組合が機能せず意思決定できなかったり、メンテナンスもできなくなった結果、マンションがスラム化してした場合、地域全体へ悪影響がある。
  • そうならないようにマンション管理はしっかりしていきましょう。
  • 問題に応じて外部の専門家をうまく活用して行きましょう。
  • マンション管理の主体である管理組合運営を適切に行うことができるよう支援する専門家としてマンション管理士を創設します。

つまり「マンションが管理不全にならないように管理組合をサポートする専門家」としてマンション管理士は創設されたのです。

そして、マンション管理士創設から10年経過している現在では当然状況は差し迫ってきています。建物の老朽化という絶対に避けられない現実が問題の背景にあるため、差し迫ってくるのは当然のことです。

国土交通省の資料を見ると2031年までには10年毎に老朽化マンションが倍増していくという状況です。
kokudo
国土交通省「マンションの新たな管理方式の検討 – 国土交通省」平成24年1月
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000013.html

居住者の高齢化や日本の人口減などを考えると、老朽化したマンションをどのように「終わらせるか?(取り壊し・建て替え等)」という問題にも直面します。

しかし、管理組合が機能していなかったとしたら、どうするかの意思決定すらできません。居住者が高齢化して追加の費用負担が困難になれば、「メンテンスもできない現状維持もままならない状態」となり、やがてはスラム化してしまうでしょう。

管理組合目線でサポートする専門家の必要性

まず、そもそもマンションは1棟全体で見れば、かなり高額な資産であり、その資産の運用には適切な意思決定が必要です。単純に考えればマンション管理でなくとも、専門性が高く、高額な資産の運用において専門家のサポートを受ける、という選択肢を考えるのは当然のことです。

国土交通省の指針では「外部の専門家の活用推進」が明記されていますが、その背景は「適正なマンション管理には管理組合側にも専門知識やノウハウが必要だ」ということです。

管理組合と管理会社は利益相反となる場合もある

マンション管理士がいなくても、管理会社が専門知識をサポートしてくれるではないかと感じる方もいるかもしれませんが、管理会社は管理に関する業務(管理費等の出納や会計、管理員の派遣、清掃・メンテナンスなど)を委託されている事業者です。

この管理会社にマンション管理の意思決定までサポートしてもらうというのは、例えば、証券会社の言いなりで自分の資産を運用するようなものです。証券会社としては当然自社の利益になりやすい商品を勧めることもあるでしょう。営利を目的とする企業として普通に考えられることです。

しかし証券会社の勧める商品も数ある投資先の一つでしかありません。他の投資先のほうが、本当は良いと知っていても、他に投資されてしまったら証券会社の取り分は減ってしまうので、勧めることはできません。提供される情報も偏ります(あくまでたとえ話で証券会社が顧客の利益を全く考えずに全ての行動が自社の利益のみを追求しているということを言いたい訳ありませんので、誤解があればお詫びします)。

このように、管理組合と管理会社との関係は利益相反となる可能性があります。

管理会社は例えば、自社で工事の提案をする場面等では「管理組合の立場になって提案しにくい場合もある」ということです。管理会社は株式会社である以上は「株主の利益のため、管理組合にサービスを提供してその対価として委託費や発注された工事代金などを得ている」のです。

管理組合が管理会社のサービス品質を見極めるのが難しい

管理組合は管理会社のサービスをチェックする立場ですが、サービスの適正さの判断は、「専門知識」「他社のサービスとの比較(基準の理解)」「チェックの品質(時間とノウハウ)」が必要です。管理組合では当然このようなノウハウは持っておらず、多くの場合、現実的にはチェック機能は働いていない状況がほとんどと言えます。

管理組合からのチェック体制が必要

マンション管理士が制定された「マンション管理適正化法」では、同時に「管理業務主任者」という資格も創設されました。管理業者には、この管理業務主任者を一定数の管理組合から業務を受託する場合に設置が義務づけられています。また、管理会社自体も登録制となり、管理事務報告や契約締結前の重要事項説明も義務付けられました。

これは専門的知識が必ずしも十分ではない管理組合が、管理会社へ業務を委託する契約をするときに、管理組合の財産が毀損したり、内容も理解しないまま勝手に契約が半永久的に更新され続けたりしないように最低限の管理組合の不利益を蒙らないことを目的としています。

しかし、法律が制定されてから10年以上経過している現在でも、明るみに出るだけで数ヶ月に1件は管理会社の従業員による管理組合の金銭を着服、横領する事件が業界紙を賑わし、当該管理業者には行政処分が下されたりしています。
国土交通省ネガティブ情報等検索システム「マンション管理業者の処分」

もちろん、これは管理会社のモラル・監督不足が一番の原因ですが、「他人に財布を預けておいて注意を払わない」管理組合にも責任がないとは言えません。このような問題に対応するためにも「管理会社の品質の担保」とともに「管理組合側の専門家」が必要であると国土交通省は判断したのです。

管理組合立場の専門家の必要性

まとめると、これまでの「管理組合がほとんどの業務を管理会社にお任せする」のみでは、構造として「適正なマンション管理」が生まれにくい状況なのです。

いくら「管理組合にしっかりしてください」と啓蒙しても現実的に難しい現状もあります。それは、すべての会社に「税金の計算をしっかりやってください」といっても現実的に無理があるから税理士が存在するように、マンション管理士も健全なマンション運営に必要性・必然性があるために生まれたのです。

当コラムは執筆時の法律・判例に基づいております、参考にいただく際は最新の法律・判例を確認頂きますよう、お願い致します。また、平易な表現により、一部の例外・解釈等を簡略化している場合がございます。正確には個々のマンションの管理規約等、区分所有法等をご参照ください。
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