ハードルの高いマンション建て替え 円滑に進める方法は?
どんなマンションにもやがて寿命はきます。マンションの建て替えは、区分所有者にとってハードルの高い問題。円滑に進めるには、どうしたらいいのでしょうか。
管理士の果たす役割 区分所有者の合意形成を助ける
マンション建て替えの話というのは、途中で頓挫するか、あるいはもう少し時間をかけて考えましょう、と先送りなるか、どちらかのパターンが多いのです。それだけ難しい、ハードルが高いということです。
なぜか。大きな理由は2つあって、一つは区分所有者の合意形成が難しい。もう一つが、自己負担額の大きさです。現在の経済状況とマンションの建設コストの高騰を考えると、建て替えに要する自己負担は相当大きな金額になってきます。
そんな困難な話を進める中で、マンション管理士が果たす役割は、おもに区分所有者の合意形成の部分です。管理組合員は、建て替えに関しての知識がないことが多い。しかしそれを各所有者に説明できないと、建て替えの話を進めること自体、難しいわけです。
そこで私が説明するのは、「このまま住み続けることはいずれできなくなる」ということ、「このままマンションを適正に維持していくにはこれだけのお金がかかる」、「それだけお金をかけても改善できないところは残る」ということです。
たとえば、天井の高さや部屋の広さは改善できないし、バリアフリーにしようと思えば膨大なコストがかかる場合もあります。修繕積立金を値上げしても、維持は困難になっていく。ていねいに、そういったことを説明し物事を進めて行くアドバイスをするのが、管理士の役割です。
合意形成のしやすいマンション、しにくいマンション
区分所有者の所得が、割と皆さん同じレベルのマンションは合意形成しやすいと言えます。タワーマンションは新しい様式なので、建て替えの例というのはまだありませんが、たとえばタワーなら最上階が2億円や3億円するのに下層階は3000万円とか、値段のばらつきが大きい。そういうマンションだと、区分所有者の所得にも大きな開きがあるでしょうから、合意形成は難しいと考えられます。
あとは、所得がほぼ同じでも、低いほうで同じというのはなかなか難しい。建て替えの自己負担を背負うことが難しかったりします。
法改正でマンション敷地売却制度が創設
昨年12月から、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建替え円滑化法)が施行されました。
これは、マンション建て替えに悩んでいる管理組合にとっては大きな手助けとなるものです。この改正によって「マンション敷地売却制度」が創設されました。耐震性不足の認定を受けたマンションに関しては、区分所有者の5分の4以上の賛成があれば、マンションおよび敷地の売却を行うことが決議できるものです。
以前は、多数決では売却できませんでした。マンションを取り壊して更地にし、その更地をたとえばマンション建設業者などに売却してお金をみんなで分け、それで終わりにしましょうよ、ということが5分の4の賛成があれば可能になったわけです。耐震性不足の認定を受けるなどの条件はいくつかありますが。
たとえば、「自分はこのマンションを売って2000万円もらって、子供のところへ行く」とか、「老人ホームに入る」など、選択肢が出てくるわけです。そういうことを冷静に考えられる環境を作ってあげて、きちんと納得のいく説明をしてあげられれば、合意形成しやすくなるかもしれません。
建て替えや敷地売却に有利なマンションとは
建て替えに有利な絶対的条件は、土地の値段が高いこと。そうでないと、評価が低くなりますから。
たとえば郊外の、さらにはずれの安い土地に建てた物件であれば、土地の値段が安いわけですから、たとえ敷地を一括売却したところで配当は少なくなってしまいます。また、自分たちが現在持っている資産の評価も低いわけですから、建て替えをするにしても負担額がより大きいわけです。
それが、都内23区の中の土地の値段が非常に高いところに建てた物件なら、一括売却すると一人当たりそれなりの金額が戻ってきます。ある程度まとまった金額を得ることができるなら、いろいろな選択肢を考えることもできます。
当たり前の話ですが、高いものを買っておくに越したことはないわけです。しかし、土地の値段が高ければ、マンションの購入費も高くなります。ずっと支払い続けなければいけない固定資産税も高額になります。ですが、建て替えや一括売却のときになれば、その分メリットはあるというわけです。
ただし、先行きの建て替えのことまで考えて購入する人は普通はいらっしゃらないのです。そのときの手持ち資金を考えて購入物件を決めるのですから、それは仕方ないのですが。
マンションの寿命はどこで判断? 長寿命化は可能か
コンクリートそのものはきちんと管理してあげれば、恐らく100年ちゃんと持つと思われます。しかし設備が古くなってきたり、陳腐化するので、日本なら70年~80年で一区切りと考えたほうがいいかもしれません。
寿命を判断するポイントは、これ以上生活を続けていけるのかどうか、ということです。一番典型的なのは、設備が更新できないと漏水事故が多発します。そうすると修繕しなくてはいけないのですが、管理組合がしっかりしていなければ、修繕積立金もたまっておらず、そういった修繕も満足にできないことがあります。そういったマンションは、いわば泥船のようなもの。もはや逃げ出すことを考えたほうがいいかもしれません。
これから建設されるマンションは、100年持たせるために設備の交換などを想定して設計すれば、長寿命を実現できると思います。たとえば、設備の更新をするときに手間暇かからないようにユニット化するなど、そういった設計をセールスポイントにして作られているマンションも出てきているようです。
なかなか建て替えは難しいので、それなら100年きちんと使えるものをあらかじめ作ったほうがいい、という考え方もあります。親子2世代でローンを組むこともできますから。
管理規約・使用細則の変更はASETUS(アセタス)にご相談ください
管理規約や使用細則を変更する場合は、その背景にマンション特有の課題や問題があるため、単に変更案を作成して総会に提案するだけで簡単に承認に至るものではなく、また、承認されたとしても、変更後のルールを円滑に機能させるのは難しいものです。
アセタスでは、背景にある課題や問題を把握・分析し、居住者・管理組合のことを考えた「管理規約・使用細則の変更案の作成」や「組合員に対する説明と総会決議までのサポート」などを通じて、マンション生活のクオリティの向上のお手伝いを行っております。是非ご相談ください。